漫画の描き方(4) 初心者がやってしまいがちなこと

「設定を考えよう」 「ストーリーとコマ割を考えよう」 「4コママンガを描いてみよう」と続けて参りました「漫画の描き方」シリーズ。今までは比較的見本・お手本的な説明が多かったのですが、今回は「初心者がやってしまいがちなこと」と題して、漫画を描く際に気をつけるべきご紹介しましょう。

今回、ちょっと絵が多め。すべてクリックすると大きな画像が表示されるようになっています。

■キャラクターの立ち位置が変わってしまう

漫画の描き方4サンプル10左の2コマをご覧下さい。1コマ目と2コマ目で二人の立ち位置や、かなめちゃんの鞄の持ち位置が左右入れ替わってしまっています。セリフの流れに気を取られてしまい、キャラクターの配置が入れ替わってしまったんですね。

意図的でない限り、キャラクターの立ち位置や持ち物が変わってしまうのは御法度とされています。しかし、慣れないうちは話を作ることに集中する余り、意外とやってしまいがちな事の一つだったりします。

第3回の4コママンガを描いてみようの最後に「イマジナリーライン」の話が出ています。キャラクターを配置する際は、カメラの位置やアングルを意識することで、キャラクターの立ち位置の切り返しを防ぐことができます。例えば、視点をいきなり逆側に持っていくのではなく、二人の上を通過して逆側に行くようにすれば、流れとしても自然にカメラアングルを変えることができます。

カメラアングルはなんとかなったとしても、もう一つ意識しなければならない事があります。それは「キャラクターのセリフの順番」です。

■セリフの順番がおかしい

漫画の描き方4サンプル5第2回「ストーリーとコマ割」では、漫画におけるコマの順番について説明しました。右上から左下に流れるように、という原則はフキダシも同じです。

しかし、複数の登場人物が会話をする場合、キャラクターの配置とセリフの順番が一致しないコマが出てきてしまうことがあります。

例えば、右の2コマ目では、フキダシだけ見るとこみぽちゃんが先に喋っているように見えます。しかし、よくよく見てみると、かなめちゃんのセリフに応えるようにこみぽちゃんが喋っていることが分かります。これがキャラクターの配置と、セリフの順番が食い違ってしまっている状態です。


漫画の描き方4サンプル6その場合、アングルの変更の為のロングショットと、フキダシのクロス配置を併用すると、自然な流れにすることができます。

右のようにキャラクターとフキダシを配置すれば、セリフの順番はこみぽちゃん→かなめちゃん→かなめちゃん→こみぽちゃんの順になります。同時にカメラアングルを行っていても、違和感なく読むことが可能です。

この時フキダシのしっぽをキャラクターの口元近くまでのばしてしまいがちですが、どんな場面でもしっぽの部分は短めにしておいた方がスッキリと仕上がります。


■心理描写がうまく伝わらない

漫画の描き方4サンプル8キャラクターの心理描写を伝えるにも色々と方法がありますが、一番手っ取り早いのはアップとロングショットを使い分けることです。

まず、「うれしい」「楽しい」という表現の場合、キャラクターをアップにすると効果的です。また、マンプや効果線などを加えることで、うれしさをより効果的に見せる事ができます。

左の例ですが、ロングショットで、かつ妙に空間が空いている構図だと、本当に心から喜んでいるのか今ひとつ分からない感じになってしまいますが、思い切ってアップにした下のコマでは喜びの感情が非常に分かりやすくなります。


漫画の描き方4サンプル9反対に落ち込んでいる場合や孤独な感じを出したい時は先程とは逆に、ロングショットにして空間を多く取ってあげると効果的です。

特に落ち込んでいるシーンを見せるときは小さいコマで見せるよりも大きいコマで見せて上げるのが効果的です。縦に長いコマの一番下の部分で落ち込んでいるキャラクターを見せると、文字通りの「どん底」な感じが演出できます。

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慣れないうちはバストショット(上半身のショット)だけでキャラクターを配置しがちで、作品を改めて見てみると同じようなコマがずらっと並んでしまった、なんていうこともあったりします。ストーリー物など、心理描写が重要な作品を作る際は、こういった構図を使った見せ方を考えてみるのもいいでしょう。

 


さて、4回に渡ってお送りしてきました「漫画の描き方」ですが、いったんここで終了です。漫画の描き方にはいろいろなコツがありますが、普段読んでいるマンガは、すべてお手本であり、教科書になります。ちょっと意識してマンガを読むようにするだけでいろいろな発見があるはずです。いよいよ今週末からゴールデンウイーク。この機会にたくさんマンガを読んで、コミPo! でたくさんマンガを作ってみてはいかがでしょうか。

なお、本記事はコミPo! マンガ入門(太田出版刊)を参考にさせていただきました。コミPo! マンガ入門では、田中圭一委員長が直々にさらに詳しい説明を行っています。

【中の人】

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