高崎市美術館で開催中の「『描く!』マンガ展」を見に行ってきました

昨年から大分、北九州と巡回展示され、コミPo! も協賛している「『描く!』マンガ展」が高崎市美術館で開催されています。3月21日には田中圭一・伊藤剛両先生が来館してのトークイベント「『描く!』を読み解く」が開催されました。今回はその模様も合わせてレポートいたします。

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直筆原稿の迫力!「『描く!』マンガ展」の展示

高崎市美術館はJR高崎駅西口から歩いて数分のところに立地する美術館です。近代的な建物は3フロアに分かれており、今回の展示では上のフロアに上がれば上がるほど近年の漫画家達の作品になるように展示されています。

1階エントランスには「ここから未来のマンガ家が生まれる」というコンセプトでpixivに投稿されたばかりの作品がリアルタイムで投影されています。先に進むと手塚治虫の幼少期の作品や当時の同人誌など貴重なものが展示されていました。当時の同人誌は印刷したものではなく、直筆のマンガを冊子状に綴じてみんなで回し読みする、というスタイルだったそうです。中には郵送で遠方の人まで届けられ、日本中を駆け巡った冊子もあったとか。

2階・3階にはさいとうたかを、諸星大二郎、竹宮惠子、島本和彦、平野耕太と言った今のマンガ界を牽引する諸先生方の直筆原稿の展示が行われています。展示にはその画風などに着目した「田中圭一の着眼点」のコメントが模写と一緒に掲載されています。

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また通路には懐かしい「なかよし」の表紙のピンナップや、日本最大の同人誌即売イベント「コミックマーケット」に関する資料なども掲示されていました。

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展示物は会期の前半と後半とで一部入れ替えを行っているそうで、現在は後半用の展示に切り替わっているそうです。すでにご覧になった方でも入場券の半券を持っていけば2回めの入場時に割引料金で入場できる仕組みもあるとのことです。二度目にはなにか新たな発見があるかも……。

トークイベント「『描く!』を読み解く」

3月21日にはコミPo! 製作委員会委員長であり、精華大学准教授の田中圭一先生と漫画評論家で東京工芸大学准教授の伊藤剛先生によるトークイベントが開催されました。事前申し込み制だったイベントは満席で、マンガファンの熱さを感じました。

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伊藤剛先生

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田中圭一先生

トークイベントでは展示されている作品に関する話題を中心に進みました。展示されている先生の一人、諸星大二郎先生の話になると田中先生は現在ぐるなびで連載されている「田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-」の諸星大二郎先生の回のタイトルコマを例にとり、「キャラクターや背景など、コマのどの部分がどう作用して『諸星大二郎感』を出しているのか」を解説。自称・諸星大二郎神信者(ご本人談)という伊藤先生もこの解説に大きく頷いていました。

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その後話はキャラクターの輪郭線などの話に発展。伊藤先生は漫画家の「その人らしさ」の一つと言われる「線」を生み出す「ペン先」に注目、Gペンやカブラペンと呼ばれるペン先がどれくらいの時代から使われていたのか、という研究を披露しました。今でこそ「マンガといえばGペン」というのは当たり前のように言われていますが、Gペンのメーカーはつい最近までマンガを描くのにGペンが使われている、という事実を知らなかったそうで、「なんで売れてるんだろう?」と不思議に思っていたそうです。

さらに実演のコーナーでは田中先生が漫画家さんそれぞれの「塗り方」に注目。「この先生は影を青系の色で表現することが多いんです」「この先生のキャラといえばほっぺに紅が入ってますよね」といった具合に、思わず頷いてしまうような「塗り」を何枚もその場で仕上げていました。

コミPo! はマンガのよくある表現を素材(符号)に落とし込んで、それを組み合わせることで作品を作る、というコンセプトで作られました。今回のトークイベントを聞いてみて改めて、この方の着眼点はなるほど違うな、と思わせることが多くありました。(田中先生といえば、の下ネタもところどころに混じってはいましたが…)

トークイベント終了後は来場者がサインを求めて長蛇の列を作っていました。展示会のパンフレットや田中先生の著書だけでなく、中にはスマートフォンの背面パネルにサインを入れてもらっている方までいらっしゃいました。会場の外まで伸びた列に、田中先生は笑顔で応えていました。

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『描く!』マンガ展 高崎は4月10日まで、その後豊橋、川崎へ

現在高崎で行われている『描く!』マンガ展、会期は4月10日までとなっていますが、その後の巡回スケジュールも発表されています。

まず2016年4月29日(金)から6月5日(日)までは愛知県豊橋市の豊橋市美術博物館で、その後7月23日(土)から9月25日(日)までは神奈川県川崎市の川崎市民ミュージアムでの開催が決まっています。お近くの会場で開催された際は是非「『描く!』マンガ展」に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

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